005:みんなやらないけど、企画立てる前に絶対やらなきゃいけないこと-企画プロセス実況中継-2

さて、前回のお題の復習です。

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これに対して、実は設定されていた背景があることをお伝えしました。

【裏設定】

  • 東洋経済が発表する大学の就職率ランキングで、昨年初めてワースト20に入ってしまったA大学
  • それを見た経済界の大御所のOBから大学学長に直接連絡が入る
  • 「母校がここまで落ちぶれるのを見ていられない、この現状を改善しない限り、寄付金の金額を考えさせてもらう」とのこと
  • この大御所OBはA大学の寄付金の実に1/3を占める金額を寄付いただいている方
  • ただでさえ老朽化が進むA大学のキャンパスのメンテナンスに充てられている寄付金の金額がこれ以上減ることは、大学キャンパスの景観を損ない、新規入学者の減少による学費収入の減少というバッドサイクルに入る
  • 学長としては何としてもこのOBのご不満を解消したく、キャリアセンター長に「就職率を早急に何とかしろ」という命令が下った
  • キャリアセンターとしては、就職ガイダンスの数を増やしたり、キャリアドバイザーの数を増やしたりしたけど、就職率の結果はあまり改善せず
  • 困ったキャリアセンター長はコンサルタントである私に相談してくれている

裏設定を知る前に皆さんがやろうとしたことと、裏設定を知った後に皆さんがやろうとすることってだいぶ違うんじゃないかと思います。

だって本当に困ってるのは就職率じゃなくて寄付金なんですから。

ここで、普段僕が企画を考える際に通してる思考をまとめたプロセスシートをご紹介します。

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企画を考える際に、一番最初にやらなければいけないことはSTEP①の「見立てる」です。一般的には企画というとSTEP②の「仕立てる」をイメージするかもしれませんが、①をすっ飛ばした②は本当に意味のないことになります。

今回の場合は、もし就職率を改善できたとしても、大御所OBからの寄付金が減ってしまっては何の意味もないのです。どんだけ劇的に就職率を改善してもです。

なので、コンサルタントのあなたがまず最初にすべきだったのは

【背景・目的】の徹底確認

  • なぜ、就職率を上げないといけないのかを聞く
  • なぜ就職率ランキングでワースト20に入ったらまずいのかを聞く

【目標(成功・失敗)】を顧客と一緒に定義

  • 何がどうなれば成功ですか?
  • 逆に最低限どうならなければ失敗ですか?

ここがすごく重要で、普通目標というと⚫︎⚫︎という一点を定義しちゃいますが、企画を立てる時は必ず成功と失敗の2つのラインを別々に確認します。

そうすることで、成功と失敗の間に「失敗ではない」という空間が生まれます。

このスペースを創り出せるかどうかで、今後の企画の自由度が大きく変わってきます。

そこをどんどん掘っていくのです。

今回の例題で言えば、

シンプルに考えれば、失敗は「大御所からの寄付金を減額されること」で、成功は「寄付金を減額されないこと」ですよね。

じゃあ、「就職率は改善せず、大御所からは寄付金減額されるけど、他のOBからの寄付金を増やして大御所分を埋め合わせする」という目標はどうでしょうか?それでもOKかどうか聞いときたいですよね。

こう聞かれると、キャリアセンター長は「いやいや、それではダメだと思う。就職率がこんなに低いのはそもそも問題だからちゃんと改善したいし、それに大御所OBは寄付金のみならず、様々な形でこの大学を支援してくれてるので、大御所OBが気にしてる就職率は上げないといけない」とか話してくれて、だんだんとこの企画を立てる上でのフィールドが見えてくるのです。

そうなると僕は聞きたくなります。

「就職率がどのぐらいになったら大御所OBは納得してくれるんでしょうか?」と。

でも、僕のクライアントであるキャリアセンター長は「わかりません」と困り顔。学長に聞いても「それはわからんなぁ」とか言われちゃうわけです。

そうなんです。クライアントすら、何が目標かわからないケースが結構あるんです。

危なくないですか?このままの状態で企画を進めるの怖くないですか?

だから、本当にまずやるべきは、「大御所OBへの課題感ヒアリング(のふりをした目標の確認)」です。

その面談の中で「いついつまでに就職率をこのぐらいにすべく全力で頑張りますので、その際はどうが寄付金の減額をご容赦いただけないでしょうか?」「わかった。頑張れ。」という握りをしないと何をしようと無駄になるリスクがあります。

今回の企画ではこのプロセスを挟めるかどうかが一番大事な気がします。

大御所OBとのアポなんて取れるのか?そこまでする必要あるのか?とか思いたくなりますが、必要なんです。残念ながら。

【課題検証】

今回で言えば、「学長が大御所OBからの寄付金が減ることを、かなり困ってる」という感じでしょうか。大事なポイントは「大御所OBからの寄付金」という点で、それがずらせないのであれば、そこに向き合うしかないんです。

【現状の解決手段の徹底調査】

今回で言えば、就職ガイダンスの内容や、増やしたキャリアアドバイザーの内容を調査して、なぜ効果が出てないのかを調べることです。

ただ、それすら大御所OBといつまでに就職率をどのぐらいにするので、寄付金減額は勘弁いただきたい、という握りが済んだ後に、就職率を上げることがちゃんと目標となった時点で意味が出てくる行為です。

 

STEP①の重要性や難しさをご理解いただけたでしょうか?

こうやって例題として出されると、そんなの「背景を聞くなんて当たり前だよ」と思われるかもしれません。でも、果たして大御所OBにまでヒアリングに行ける人はどれだけいるでしょうか?もしくはご自分のお仕事で上司から何かお題をもらった時に、ここまでのレベルで確認している人ってどれだけいるでしょうか?正直かなり気まずい雰囲気になったり、いいからやれよ、と言われたり、色々と面倒なはずです。

でも、いい企画を生み出すには、このSTEP①の難関をクリアしなければならないこともご理解いただけたと思います。

今回はSTEP①「見立てる」の解説をしました。

次回はいよいよSTEP②「仕立てる」に移りますね。

そいでは!

【今日の「細かすぎて伝わらない思考」】

昔から怒ってるんですが、どうして電車内で「イヤホンの音漏れに注意ください」っていう注意を車内放送でやるんだろうと思ってます。音量ガンガンで聞いてる迷惑野郎に対する情報のデリバリー方法としては史上最悪のメディアを選んでいると思います。同様に、スマホのながら歩きを注意する張り紙も「だから、スマホ見てるからこの張り紙見てないって!」って思います。

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005:みんなやらないけど、企画立てる前に絶対やらなきゃいけないこと-企画プロセス実況中継-2” に対して 2 件のコメントがあります

  1. 山田花子 より:

    更新を続けてくださり、ありがとうございます。日々、拝見しようと思い、ブックマークしました。

    今回の内容も、仕事に活かせそうです。

    私の理解なんですが、まず、「企画しろ」と指示を受けた時の「顧客」が誰なのかを見誤ってはいけないのだと思いました。この事例だと、「大御所OB」ですね。私の仕事でいうと、直接指示を受けるのは課長からですが、ヒアリングすべき「顧客」はもっと上にいると感じました。

    正直、課長自身も腑に落ちてない企画(その、さらに上司の思いつき)を、我々に落として来ているので、課長とやり取りしても、時によって判断がブレるし、らちがあかないのは、薄々気づいていたのですが、自ら、その上に掛け合うとなると、なかなか勇気がいりますね、、、
    考えただけで、胃が痛いです、、、

    個人的には、本当にお金を払ってサービスを受け取る人を「顧客」と考えて仕事をしたい!(この事例だと学生)という思いと、なかなかそうはいかない現実とのギャップにモヤモヤしていたのですが、やりたいことをやるにも、まずは、「大御所OB」との握りをする必要があると理解できました。

    でも、勇気がいる、、、

    1. hshingo より:

      ブックマークしていただけるなんて嬉しいです。ありがとうございます。「顧客が誰なのか」。この問いは本当にパワフルで、同時に残酷でもあります。おっしゃる通り埒があかないのです。胃が痛いです。でも、本当に企画を成功させるにはそれやるしかないんですよね。だから、できる企画の人って言いにくいことをうまく相手に伝える力が高いと思います。オーガナイズの力ですね。でも、意外と大御所OBと握るのって難しくなかったりする場合もあって、もし人がいい場合は、謝罪と頑張って就職率UPに取り組むことをお伝えすれば、実は実際の就職率が上がらなくても寄付金を減らさないでくれるいい人かもしれません。そんな大事な情報をつかまずに、一生懸命企画を考えることのほうが寒気がしますw。勇気をもって一番大事な情報を先に取りに行くことを頑張りたいですね^^。

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